東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

Language and Information Sciences, University of Tokyo

東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

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「言語態・テクスト文化論コース」教員紹介

石原あえか

ドイツを代表する詩人ゲーテ(1749-1832)、特に彼と近代自然科学に関する研究が専門です。並行していわゆるゲーテ時代を中心とする近代科学技術や明治期における日独医学交流の歴史、またドイツ語圏の女性科学者などにも注目し、調査を進めています。手稿や公文書も含む一次文献を豊富に使う調査・分析手法が特徴のひとつです。文系・理系の枠にはまらず、文献を探したり、原書を読んだりするのを厭わない、意欲ある学生を期待します。

板津木綿子

20世紀前半のアメリカ文化史が専門です。また同時期の日米の文化交流史も勉強しています。近代産業社会における余暇の役割に関する言説を日米の知識人の論調や、映画を中心とした大衆文化を読み解くことで考えてます。また、政治イデオロギーと消費文化との交点で、特に捻れが生じた時のポリティックスについても関心を持っています。アメリカ大衆文化全般について研究してみたい方を歓迎します。

大石和欣

近代イギリスの文学テクストを社会や歴史という動態の中においてとらえるのが私の研究です。ことばが言語態として発現する過程で内奥に織り込まれた時代精神、歴史の搖動、文化の潮流、民衆の喜怒哀楽、それらを生地(テクスト)の位相から紡ぎだそうとしています。現在進めている主な研究テーマは、18世紀から19世紀前半にかけてのチャリティの思想的系譜および女性と公共圏との関係性、19世紀末から20世紀前半にかけての建築の表象を、言語態として捕捉することです。

郷原佳以

言語の物質性と、言語から立ち上がる想像的世界との逆説的な関係性に関心があり、文芸評論家・小説家モーリス・ブランショを中心とした19-20世紀フランスにおける文学言語論の分析を主な研究テーマとしています。とはいえ、文学言語を日常言語から切り離すことが目的なのではなく、むしろ、文学言語を、日常言語をも含む言語の本質を指し示すものとして、さらには、視覚芸術等の他領域にも通底する「イメージ」の探求として捉えています。したがって、読解対象は狭義の仏文学には限られません。また、硬直した哲学的図式が文学的テクスト分析によっていかに脱構築されるかにも関心があり、ジャック・デリダの著作の読解を続けています。近年は、レトリック、とりわけ比喩形象(フィギュール)をめぐる諸問題と言語思想との関係にも関心を抱いています。

小林宜子

中世後期およびテューダー朝の英詩がおもな研究対象です。これらの時代の詩人たちが、古典古代や同時代のヨーロッパ文学から詩句やモティーフ、修辞的技法や意匠を借用しながら己の生きる社会への洞察や批判、憂慮を巧みに言語化していった過程を分析しています。12~16世紀のイングランドにおける文学と政治哲学、文学と法との関係を探ることも現在抱えているテーマのひとつです。「英文学史」の伝統が意図的に創出された宗教改革期の文献の読みを通じて、「英文学」や「英文学史」といった概念そのものを批判的に考察することにも関心があります。

逆井聡人

私は日本の近現代文学、近年では1930年代から1950年代に書かれた小説や詩作品を対象として研究しています。この時期の日本の帝国主義がもたらした影響とそれへの人々の抵抗を文学表現から読み解いていくことを主眼としています。特に植民地期の朝鮮を描いた作品や、日本からの解放後の在日朝鮮人文学を扱うことが多いです。また、その時期の文化の総体を把握するために、映画や思想、メディア言説等も検討しています。こうした専門からの派生として、最近の小説や映画などを批評することもあります。 日本の文学や文化史を研究したい人、歓迎します。

秦邦生

近現代イギリス文学、特にヴァージニア・ウルフ、ウィンダム・ルイス、ジョージ・オーウェルなど、20世紀前半のモダニズム以降の小説を中心に研究してきたが、最近ではカズオ・イシグロなど現代英語圏小説にも関心の幅を広げている。これと並行して、言語テクストと映像テクストとの横断的関係に着目して、特に小説から映画への翻案/アダプテーション研究も行っている。ユートピア/ディストピア、ノスタルジア、情動、リアリズムとモダニズムの緊張関係などが近年のキーワード。

武田将明

デフォー『ロビンソン・クルーソー』やスウィフト『ガリヴァー旅行記』など、十八世紀の英国小説を中心に研究しています。文学と国家の関係や、近代小説の発生と発展の世界史的な意味を考えています。近年は、大江健三郎から平野啓一郎、舞城王太郎、川上未映子、中原昌也など日本の現代小説に関する評論も発表しています。授業で主に教えるのは英語圏の小説と批評理論ですが、地域に囚われることなく小説とは何か、近代以降の文化とは何かという問題を深く考える学生も歓迎します。

田尻芳樹

私の専門はイギリス文学で、特に20世紀初めの文学、芸術の革新的な動きである「モダニズム」に関心があります。また、その「モダニズム」の流れの中で20世紀の小説と演劇の双方に革命をもたらしたサミュエル・ベケットとその周辺を研究の中心にしてきました。その他、南アフリカのノーベル賞作家J.M.クッツェーを初めとする現代の英語圏小説や、批評理論も守備範囲にしています。結局のところ、存在とは何か、言語とは何か、といった根源的な問いを発している文学が好みです。

月脚達彦

専門は朝鮮近代史。19世紀後半から20世紀前半の朝鮮の思想史を、歴史学の立場から研究しています。植民地とナショナリズムの問題が目下の研究テーマです。授業では、現代の正書法が確立する前の古い文体で書かれた韓国朝鮮語のテクストを精読しながら、東アジアにおける朝鮮の「近代」を考えていきます。韓国朝鮮の社会と文化について、歴史的な研究を志す学生の受講を歓迎します。

鳥山祐介

専門はロシア文学。主たる研究対象は18世紀から19世紀前半――ピョートル一世による改革の開始からロシア文学史上最大のカノン作家であるプーシキンの登場までの時代、ロシア文章語のあるべき形が模索され、ヨーロッパ文化の枠内で近代ロシア文化の基礎が築かれていく時代――のロシアの言語文化です。急激な西欧化により社会の様相が一変する中で、言語が人々の心の中にイメージをつくり出すことはどのような意味を持ったのか、という問いが関心の中心にあります。こうしたテーマに直接取り組みたい方はもちろん、プーシキン以前のロシア文化のコンテクストへの視点を得た上でそれ以降の近現代ロシア文化を探求したいという方も歓迎します。

品田悦一

十数年前から、近代における古典享受の枠組みを洗い直す作業に着手し、その成果を『万葉集の発明』にまとめた。その後、個別の事例を掘り下げる作業を進め、一昨年『斎藤茂吉』を公刊した。茂吉は偉大な歌人である以上に、近代日本人の一典型なのだと思い知った。

『万葉集』、短歌、古典……古臭い分野と思われるかもしれないが、決してそんなことはない。意外な通路であなたともちゃっかり繋がっている。嘘だと思うなら試しに学んでみるがいい。

ペティート,ジョシュア

専門は日本近代文学ですが、ハーマン・メルヴィル(特に『モビー・ディック』)の日本における受容と翻訳史を研究しているため、アンテベラム期のアメリカ文学にも関心があります。批評理論としては翻訳論をはじめ、美学のイデオロギーの関係性や風景論に手を染めています。

星埜守之

研究分野:1)シュルレアリスム:20世紀前半のフランスで生まれたシュルレアリスムは、詩人、画家、彫刻家、写真家など、多彩な表現者を巻き込んだ精神の冒険と言われています。このシュルレアリスムを、同時代の様々な思潮などとも結びつけながら研究しています。2)フランス本土以外の地域から発信されるフランス語文学の研究。カリブ海(マルチニックなど)、太平洋地域(ニューカレドニアなど)の新しい文学に関心があります。 趣味:ポピュラー音楽(ロック、ジャズ、ソウルなど)を聴くこと。お酒(?)。

村上克尚

日本の戦後文学を専門にしています。これまでは、武田泰淳、大江健三郎、小島信夫を中心に、戦後の人間性(主体 性)言説に抗う、日本の戦後文学作品に表現された独自の倫理を記述する作業を進めてきました。そこから派生して、現在では、(1)戦後女性文学における動物表象、(2)震災後文学における自然‐人間観の変容、(3)沖縄における文学と思想などに関心があります。近現代の日本語で書かれた文学を研究対象としたい方の助けになれればと思います。

山﨑彩

専門はイタリア文学です。19-20世紀にトリエステで書かれたイタリア語文学を研究しています。オーストリア帝国領として発展したトリエステは20世紀を通じて度重なる国境線変更に翻弄されましたが、その中から特異な作家たちが輩出され、彼らは現代イタリア文学において重要な地位を占めることになりました。近現代イタリア文学に関心がある人の研究の手助けができればと思います。

山田広昭

狭義の専門はフランス近代文学(とくにポール・ヴァレリー)ですが、浮気性(?)のためかドイツや日本の思想家にも手を出してきました。その背景には文学や芸術の政治的機能に対する関心があります。批評の方法論としては、物語論(ナラトロジー)および精神分析批評に比較的深くコミットしており、授業でもそれらをとりあげることが多くなっています。

吉国浩哉

19世紀のアメリカの文学、とくに「アメリカン・ルネサンス」と呼ばれている時期の作家たちについて研究しています。具体的な名前を挙げれば、エドガー・アラン・ポー、ハーマン・メルヴィル、ナサニエル・ホーソーン、ラルフ・ウォルド・エマソン、ヘンリー・デヴィッド・ソローなどです。それに加えて、彼らの書いた時代に先行するヨーロッパでの思想文化運動(啓蒙思想、ドイツ観念論やロマン主義など)との関連についても考察を試みています。そのほか、現代アメリカのテレビドラマにも関心があります。