研究の目的

本研究の主たる目的は、翻訳と文化横断性についての理論的・実証的考察を軸として、とりわけ現代世界のポスト・コロニアルな文化状況が孕む問題系を浮かび上がらせ、それらが〈他なるもの、異質なものである文化・社会〉の受容、理解、共存という課題にどういう新しい視点や展望をもたらしうるのかを考察することにある。こうした問題の考察には、広い意味での共同体の問い直しが不可欠となる。自らの文化的同一性(固有性、本来性、独自な個性)を求める動きは、多くの場合均質で統一された共同体を目指し、強化する運動へと収斂させられてきたが、そうした動きの内実を詳細に研究することで、〈異なる他者〉を他なるもののままに迎え入れつつ関係するような共同体や文化のあり方は考えられないのかというテーマに取り組んでいきたい。それは、文化が常に直面してきた、複数の文化、言語間の翻訳という問題系を、<他者との関係>としてとらえ、共同体のあり方についての総合的な反省へと結びつける試みともなるだろう。

メンバー

研究代表者: 山田 広昭 (研究統括・共同体論)
研究分担者: 湯浅 博雄 (翻訳理論・共同体論)
  星埜 守之 (カリブ海・ニューカレドニア文学研究)
連携研究者: 宮下 志朗 (ユマニスムと翻訳との関係の分析)
  西中村 浩 (ロシア文学と社会主義リアリズム研究)
  鍛治 哲郎 (ドイツ・ロマン派と翻訳研究)
  丹治  愛 (イングリッシュネスの研究)
  田尻 芳樹 (クッツェー研究)
  武田 将明 (2012 年度より参加の予定)

イベント・研究会情報

2011年1月28日(金)13:00〜
シンポジウム「<同一者>は他者か?—翻訳と文化横断性再考」
2011年1月 9日(日)15:00〜
セミナー “Critical Turns in Conrad” or “Turning-Points in Reading Conrad”