文学作品において聞こえてくる声とはどのようなものか、「語り手」は存在するのか、文学作品にしかない言語(語り)はあるのか、あるとすればそれはいかなるものか、といった、なかなか解決の出ない問いについて、いくつかの文献を読んで考えてみたい。
ブランショ「語りの声――「彼」、中性的なもの」等を参照して問題の所在を確認した後、バンヴェニスト、バルト、ジュネットらにおけるこの問題への取り組みを概観する。その上で、文学において「語り手」は存在しないと主張し、文学言語に特殊な表現としての自由間接話法に注目した、Ann Bannfield, Unspeakable Sentencesを集中的に読解することを考えている。
教員によるイントロダクションの後、文献を読み、議論する。文献は前もって担当を決め、担当者は担当範囲を要約しながら提示し、コメントを付す。
報告および期末レポート。
Ann Bannfield, Unspeakable Sentences, Routledge, 1982
モーリス
・ブランショ『終わりなき対話』第3巻、筑摩書房、2017年。
エミール
・バンヴェニスト『一般言語学の諸問題』みすず書房、1983年。
ケーテ
・ハンブルガー『文学の論理』松籟社、1986年。
ロラン
・バルト『物語の構造分析序説』みすず書房、1978年。
ジェラール
・ジュネット『物語の詩学』水声社、1985年。
橋本陽介『ナラトロジー入門』水声社、2014年。
他は開講時に指示する。
上記は予定であり、また、受講者の顔触れも考慮するので、第1回に出ること。