スイス児童文学の古典とされるシュピリの『アルプスの少女ハイジ』。実は原題直訳は『ハイジの修業および遍歴時代 Heidis Lehr- und Wanderjahre』で、これまでもゲーテの『マイスター』との類縁性が指摘され、「教養小説」としても検討されてきた。ところが2010年、ドイツの研究者ビュトナーにより、ドイツの教育者カンプ作『アルプスの少女アデレード』との類似を指摘する論文を発表、新たな議論が展開されている。この議論のきっかけとなった論文を読み、最近の研究動向を理解するとともに、シュピリの作品の位置づけを考察したい。
まず教科書冒頭にあるBüttnerのドイツ語論文を読み、彼の主張、議論展開を把握する。続いて彼の論文中、比較対象として挙げられたカンプのドイツ語小品も通読して、実際にシュピリの『アルプスの山の少女ハイジ』と比較・検討を行い、現代の文学研究の問題点等を議論していきたい。
演習形式で行う。共通のドイツ語テクストを履修者全員が読解・分析・議論する。
授業への積極性および学期末にはレポートを課す予定。詳細は授業内で説明する。
Peter O. Büttner:"Das Ur-Heidi. Eine Enthüllungsgeschichte" (Insel Bücherei 1349)2011. ISBN: 978-3-458-19349-4
授業中に適宜紹介する。
ドイツ語原書テクストを徹底して読むので、履修者はドイツ語中級以上の能力を持つ者に限る。毎回、相当量の原文を読み込む予習が必要になるので、それを了解した上での履修が前提条件である。履修希望者は初回授業に必ず出席すること。