トマス・ワイアット(1503-1542)の詩を中心に据え、伝統の創造的継承と翻訳をキーワードに初期近代の英詩を味読する。一学期間を三部に分け、第一部では、14世紀末から15世紀のイングランドで広まったフランス風の定型詩(バラードとロンドー)に焦点を絞り、この詩形を用いて書かれたワイアットの英詩を味わう。第二部では、ペトラルカのイタリア語のソネットから翻訳されたワイアットの恋愛詩を出発点とし、その伝統を継承しつつ、独自の視点から英語のソネットの連作を試みたエリザベス朝の詩人たちの作品を精読する。第三部では、同じくワイアットを出発点に、旧約聖書の『詩篇』を基にした16世紀の複数の英詩を比較考察する。第一部で扱う詩人は、ワイアットのほかにジェフリー・チョーサー、シャルル・ドルレアン、第二部で扱う詩人は、ヘンリー・ハワード、フィリップ・シドニー、メアリ・シドニー・ハーバート、エドマンド・スペンサー、ウィリアム・シェイクスピア、メアリ・シドニー・ロウスとなる予定。
一学期間のスケジュールは以下のとおり。
第1回 イントロダクション
第2回 フランス風定型詩の伝統――チョーサーからワイアットへ(1)
第3回 フランス風定型詩の伝統――チョーサーからワイアットへ(2)
第4回 フランス風定型詩の伝統――チョーサーからワイアットへ(3)
第5回 ペトラルカ風恋愛詩の系譜(1)
第6回 ペトラルカ風恋愛詩の系譜(2)
第7回 ペトラルカ風恋愛詩の系譜(3)
第8回 ペトラルカ風恋愛詩の系譜(4)
第9回 ペトラルカ風恋愛詩の系譜(5)
第10回 『詩篇』の翻訳(1)
第11回 『詩篇』の翻訳(2)
第12回 『詩篇』の翻訳(3)
第13回 『詩篇』の翻訳(4)
毎回、2篇ほどの詩を選び、形式と内容を比較しつつ精読する。担当者による詩の解釈の発表と参加者全員によるディスカッション、および教員からの補足説明を中心に授業を進める。
出席状況、授業への参加態度、および期末レポートの成績を総合して評価する。
プリントを配布する。
授業中に指示する。
学部後期課程と大学院の合併授業となるが、英詩を読んだ経験の少ない学部生の受講も歓迎する。