教師の音読をともなった繰り返し読みが内容理解に及ぼす効果

飯野厚(D4)
【発表要旨】
本研究は、初級段階の読解力の高校生を対象として、教師の音読による繰り返し読みが短期的に内容理解に及ぼす効果と、長期的に読解力と聴解力に及ぼす効果を探ったものである。
 実験1では、75名の高校生を被験者として、教師の音読による繰り返し読みが文章の理解度に及ぼす効果を探った。その結果、以下のことが明らかになった。教師の音読(すなわち英文とモデル音声の同時提示)は、(1)どのような条件の下でも有効と言えるわけではなく、難しい文章よりも平易な文章で、理解を促進した。(2)黙読と比べた場合、理解の進捗に遅延効果をもたらした。(3)平易な文章では読解プロセスにおいて音韻処理に一時的な自動化作用をもたらし、文字から意味へのアクセスを促進した。一方、黙読条件においては、注意資源を内的音声化に向けさせた。
 実験2では、97名の高校生を対象として、長期的な処遇として、教師の音読をともなった繰り返し読みと、時間制限を設けた黙読による繰り返し読みの効果比較を行った。その結果以下のことが明らかになった。教師の音読を長期的に施すことにより、(5)文章の難易度に関わらず、黙読による速読指導と同程度に読解速度が伸張した。(6)聴解力が伸張した。(7)習熟度が低い学習者も読解速度と聴解力が伸張した。
 以上の結果から、教師の音読という音声支援のある繰り返し読みが、音韻処理を含めた読解の流暢さを確立するために有効であることが明らかになった。
ここからファイルをダウンロードして下さい
当日のハンドアウト MS Word 202KB

活動報告原稿 MS Word 26KB


HOME