紀元後1〜4世紀にローマ帝政下のギリシア語世界で書かれた古代ギリシア恋愛小説は、ルネサンス後期の16世紀に再発見され、近世ヨーロッパの文学、文学理論、絵画、音楽など様々な分野に大きな影響を与えました。代表的な作品にはヘーリオドーロス『エティオピア物語』やロンゴス『ダフニスとクロエー』、アキレウス・タティオス『レウキッペーとクレイトフォーン』などがあります。本授業ではテクストのさわりの部分に触れ、関連資料や研究論文も合わせて参照してテクスト理解を深めながら、近世の翻訳の問題や当時の文学理論との関係、さらには文学や藝術への影響について考えます。
(1)古代ギリシア恋愛小説とは?
(2)カリトーン『カイレアースとカッリロエー』
(3)エフェソスのクセノフォーン『エフェソス物語』
(4)アキレウス・タティオス『レウキッペーとクレイトフォーン』(1)
(5)アキレウス・タティオス『レウキッペーとクレイトフォーン』(2)
(6)ロンゴス『ダフニスとクロエー』(1)
(7)ロンゴス『ダフニスとクロエー』(2)
(8)ヘーリオドーロス『エティオピア物語』(1)
(9)ヘーリオドーロス『エティオピア物語』(2)
(10)翻訳・読者
(11)文学理論
(12)文藝への影響(1)
(13)文藝への影響(2)
(14)文藝への影響(3)
(15)文藝への影響(4)
講義と受講者による発表やディスカッションを組み合わせた形式を取る
参加度(予習、発表、ディスカッション)と期末レポートを総合して判断する
プリント配布
概説書
-Edmund P. Cueva & Shannon N. Byrne (eds.), A Companion to the Ancient Novel (Wiley-Blackwell, 2014).
-J. R. Morgan & R. Stoneman (eds.) GREEK FICTION — The Greek Novel in Context (Routledge, 1994).
-G. Schmeling (ed.), The Novel in the Ancient World (Brill, 1996).
テクスト
-B. P. Reardon (ed.), Collected Ancient Greek Novels (University of California Press, 1989).
-『古代文学集』世界文學体系64(筑摩書房、1961)(呉茂一訳『ダフニスとクロエー』、松平千秋訳『エペソス物語』、引地正俊訳『レウキッペーとクレイトポーン』を所収)
-カリトン(丹下和彦訳)『カイレアスとカッリロエ』(国文社、1998)
-アキレウス
・タティオス(中谷彩一郎訳)『レウキッペとクレイトポン』(京都大学学術出版会、2008)
-ロンゴス(松平千秋訳)『ダフニスとクロエー』(岩波文庫、1987)
-ヘリオドロス(下田立行訳)『エティオピア物語』(国文社、2003)
古典ギリシア語の知識は必要ありませんが、受講者の語学力に応じて、英語をはじめとする欧文文献や可能なら古典ギリシア語原典も使えたらと考えています。また、授業ではさわりの部分しか扱わないので、上記参考書欄に記した英訳や邦訳でぜひテクスト全体に触れてみてください。