東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

Language and Information Sciences, University of Tokyo

東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

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原典講読特殊演習(3)[言語態・テクスト文化論コース](ロマン主義文学の諸相)

  • 科目コード: 08C161303
  • 開講学期: S1, S2
  • 曜限: 木(Thu)3 [13:00-14:45]
  • 教室: 8号館 8-207
  • 単位数: 2.0
  • 担当教員: 大石 和欣

授業の目標・概要

「ロマン主義」(Romanticism)は一元的な定義を拒絶するきわめて多面的な文学範疇であり、また文化現象でもあります。国や地域によってもロマン主義が台頭した時代や状況は微妙に異なります。この授業では、多様性に富んだロマン主義文学の面白さと深さを、とくにイギリス文学に焦点を当てながら、ヨーロッパ全体へと目配りしながら学んでいきます。
  一口に「ロマン主義」と言っても、その定義は研究者の間でも長い間論争が続けられているきわめて不分明なものです。イギリスの自然詩人ワーズワスと風刺好きなバイロンとでは大きな違いがありますし、ドイツのゲーテやシラー、フランスのユーゴーなどを比べてみても、作品テーマや作風はまったく違います。絵画や音楽においても多様な表現や形式が見られます。
 この授業では、そうした多様な作品の中から、一般的に「ロマン主義的」と考えられている要素を抽出しながら、その時代背景を言葉の裏側に探っていきます。
 ロマン主義文学という人間の言語活動が、どのような社会や文化、あるいは風土の中で生み出されてきたのでしょうか。また、そこにはどのような人々の生き様と哲学が埋め込まれているのでしょうか。
 また、現在に生きる私たちはロマン主義をどのように解釈できるのでしょうか。脱構築主義、新歴史主義、新マルクス主義、エコ・クリティシズム、そしてポスト・コロニアリズム批評など80年代以降の文学批評理論はまっさきにロマン主義を分析対象として、大きな批評的業績をつみあげてきました。これからどのようなかたちで文学を批評していく可能性が残っているのでしょうか。
大きな政治的・社会的変動や価値観の変化の中から興隆するロマン主義文学を読むことは、変化と多様性に満ちた現代に生きる私たちにとっても意味のある知的行為でしょう。ロマン主義文学の読解を通して、文学解釈の基本についても、身につけていくことも目的にしたいと思います。

授業のキーワード

  • ロマン主義
  • ヨーロッパ文学
  • ヨーロッパ芸術
  • 西洋哲学・思想
  • 西洋史

授業計画

 Michael FerberのRomanticism: A Very Short Introductionをメインのテクストに据えて、毎回15ページ程度読み進めていきます。
内容としては、ロマン主義の定義からはじめて、ゴシックやオシアン伝説などの文学・社会現象、観念論や汎神論などの哲学的・思想的背景、崇高美などの新しい美学の誕生をたどり、フランス革命・産業革命などの歴史事象との関係を探究し、ロマン主義時代に特徴的な諸芸術を考察していきます。
毎回、Ferberのテクストに掲載されている文学作品からの抜粋も配布し、それについての具体的な分析も授業内で行っていきます。英語以外の文学作品についても触れる機会がありますが、訳本なども参照して考察していただければ結構です。それ以外の参考資料についても適宜配布します。

全体の流れはおよそ以下の通りです。

第1回 序論とロマン主義の定義
第2回 感受性の時代―ゴシックとオシアン伝説の波及
第3回 メタファーとしての詩人
第4回 苦悩する詩人像と女性詩人たち 
第5回 ロマン主義と宗教 
第6回 崇高美と自然崇拝
第7回 ロマン主義藝術
第8回 観念論と汎神論
第9回 ロマン主義時代の科学
第10回 二つの革命―フランス革命と産業革命
第11回 ナショナリズムとインターナショナリズム
第12回 オリエンタリズム
第13回 試験

 授業の方法については下段を参照してください。授業開始時にこまかな授業スケジュールを履修者に配布します。
 初回の授業から課題・ディスカッションの準備の必要がありますので、テキストを生協などで購入しておいてください。

授業の方法

毎回15ページ程度の指定範囲を予習・読解し、コメントを事前に提出する。

授業では、課題となっているFerberのテクストの該当箇所および配布する作品(抜粋など)について、それぞれの担当者が分析・考察の報告をした後、議論をクラス全員でしていきます。毎回、授業内で、学生同士で特定のテーマについての議論をしてもらうことも考えています。

成績評価方法

毎回の課題提出50%(提出がない場合あるいは無断欠席は一回につき4点減点)、授業態度25%、試験もしくはレポート25%

教科書

書名    :Romanticism: A Very Short Introduction
著者(訳者):Michael Ferber
出版社   :Oxford UP
ISBN    :978-0-19-956891

参考書

授業内で提示します。

履修上の注意

毎回の課題については事前に設定する締め切り厳守。授業内への積極的参加を求めます。