この授業では、文学作品と映像作品との関係をおもな対象として、「アダプテーション」を批評的に研究するさいに必要となるさまざまな理論や用語に関する文献を英語で読んでゆきます。
従来、いわゆる「翻案」映画はあくまでも二次的な派生物や、しばしば原作に対する悪しき省略や改竄を行うものと見られがちであり、真剣な研究対象としては認められてこなかったのが実情でした。
これに対して近年では、
(1)原作への「忠実さ(fidelity)」という基準の相対化
(2)さまざまな表現メディアの特性への配慮
(3)歴史的・社会的実践としてのアダプテーションへの認識
という三つの観点の浸透を経て、文学と映像の垣根を超えたひろい意味での「テクスト」の研究がますます活性化しています。
趣味的な議論の領域を越えて文学・映像を批評的に読み、語るためにはさまざまな用語の知識や理論的枠組みが役立ちます。この授業では、テキストを輪読して英語の読解能力を高めながら、各人がアダプテーション研究の観点をそなえて文学と映像の関係についてより深い理解を養うことを目標とします。
1.イントロダクション
2.アダプテーション研究の用語(1)
3.アダプテーション研究の用語(2)
4.アダプテーション研究の実例検討(1)
5.アダプテーション研究の実例検討(2)
6.アダプテーションの歴史(1)初期映画
7.アダプテーションの歴史(2)20世紀中葉
8.アダプテーションの歴史(3)20世紀後半以降
9.理論的文献(1)Andre Bazin
10.理論的文献(2)Dudley Andrew
11.理論的文献(3)Robert Stam
12.理論的文献(4)Lawrence Venuti
13.理論的文献(5)Thomas Leitch
14.まとめ
※以上は目安であり、部分的に変更する可能性もあります
おもに演習形式で進め、部分的に講義を挟みます
授業中の発表と議論への貢献(30%)、ならびに期末課題(70%)
プリントを配布します
Timothy Corrigan, _Film and Literature: An Introduction and Reader_, 2nd edition (London: Routledge, 2012)
リンダ・ハッチオン『アダプテーションの理論』(晃洋書房、2012年)
初回の授業で参考資料を提示するので、各自興味のある問題については自分でさらに調査と考察を進め、期末課題のテーマとなる問題意識を養っていってほしい。