東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
文学作品(小説、詩)において語っているのは誰か、あるいは、何か? この古くて新しい問いが出発点となる。この問いはすでにバルトが「作者の死」(1960)の冒頭で問うていたものだが、私たちが文学作品に触れるたびに、今なお、謎として立ち現れる。19世紀後半以降のある種の文学者たちがこの問いに「誰でもないもの、非人称的なもの」と答えたとすれば、しかし、ではその「誰でもないもの」とはいったい何なのか。非人称性を人称の問題と絡めて考えることで、問題を整理しておきたい。精読するテクストは、文学に関心がある人も言語に関心がある人も必読の基本文献である。
1)バルト「作者の死」を読む。もはや古典的文献であるが、今なお示唆するところは多く、精読しておくに値する。
2)そこで参照されているバンヴェニストの言語論を読む。バンヴェニストの〈三人称=非人称〉論を理解する。
3)そのちょうど裏面に位置づけられるブランショの〈三人称=非人称〉論を読む。扱うテクストは、初期のカフカ論から始め、余裕があれば後期の「語りの声」まで進む。
前もって担当者をあてておき、担当者は訳文を作成するとともに、担当箇所に出てくる参照事項について解説できるようにしておく。授業ではそれらを確認しながらテクストおよびテクスト間の関係性を検討する。
授業での報告・議論および学期末レポートで総合的に評価する。
コピー資料を使用する。
フランス語初級文法を終えていること。