東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

Language and Information Sciences, University of Tokyo

東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

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言語態研究基礎(『フランケンシュタイン』と文学研究の可能性)

  • 科目コード: 08C1601
  • 開講学期: S1, S2
  • 曜限: 月(Mon)3 [13:00-14:45]
  • 教室: 8号館 8-320
  • 単位数: 2.0
  • 担当教員: 大石 和欣

授業の目標・概要

 この授業の目的はメアリ・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を精読しながら、文学批評・文学研究としての基本的アプローチを確認しながら、実践することです。
 1814年、メアリ・シェリーは、ロマン主義詩人であり駆け落ち相手でもあったパーシー・ビッシュ・シェリーとともにドイツのライン河畔経由でスイスのジュネーヴに到着します。そこでパーシー、バイロン卿、医者のポリドーリと怪奇譚を語り合うことになります。話の筋を考えながら床に就いたメアリは、科学者が破壊的な力を持つ怪物をつくり出してしまう夢を見ます。小説『フランケンシュタイン』誕生の瞬間です。その構想からしてロマン主義の申し子というべき文学作品と言えるでしょう。実際、18世紀末から流行する「ゴシック」趣味を多分に胚胎していることは事実です。
 しかし、『フランケンシュタイン』はゴシック小説として片づけられる単純な作品ではありません。「語り」の構造についても技巧的ですし、同時代に発展する旅行(記)や自然科学、言語学をプロットの中に取り込み、なおかつ現代の心理学やジェンダーの問題、環境問題を投影させて読解することも可能です。また、ヴィクトリア朝や20世紀における受容の問題も考えるべきでしょうし、さらには舞台化や映画化を通した表象文化として議論することも必要です。
 授業では、初版(1818年)のテクストを用いて毎回15ページ前後を精読すると同時に、設定されたテーマに従って文学作品をどのように解釈すべきか、批評としてどのようにアプローチが可能なのかを典型的な批評の抜粋(10~20ページ)を読みながら検討していきます。

授業のキーワード

  • ロマン主義
  • フランケンシュタイン
  • 批評理論
  • ゴシック

授業計画

『フランケンシュタイン』を解剖する
語りの構造~ナラトロジーの問題
氷上の彷徨~旅行記と文学作品
旅するロマン主義~間テクスト性の問題
驚異の時代―科学とロマン主義詩人たち
驚異と脅威の矛盾
言語論としての『フランケンシュタイン』
教育の(不)可能性
分身の解体~心理学的アプローチの可能性
破壊と破滅~政治論としての『フランケンシュタイン』
空白としての女性たち~ジェンダー論の可能性
『フランケンシュタイン』のその後~改編と受容の問題
表象としての『フランケンシュタイン』~翻案と映像化の問題
SF小説としての『フランケンシュタイン』
まとめ

授業の方法

初版(1818年)のテクストを用いて毎回15ページ前後を精読すると同時に、設定されたテーマに従って文学作品をどのように解釈すべきか、批評としてどのようにアプローチが可能なのかを典型的な批評の抜粋(10~20ページ)を読みながら検討していきます。
毎回担当者1~2名の発表に続いて議論を展開していきます。
 

成績評価方法

授業への参加態度・発表60%、レポート2回(40%)

教科書

Mary Shelley, Frankenstein, ed. J. Paul Hunter (1996; New York: W. W. Norton, 2012) ISBN: 978-0-393-92793-1  
(生協で販売)

参考書

廣野由美子『批評理論入門―「フランケンシュタイン」解剖講義』中公新書、2005年。
久守和子/中川僚子編著 『フランケンシュタイン』ミネルヴァ書房、2006年。

履修上の注意