「脳」という連続的な動的システムに関する神経ネットワークの理論と、「こころ」という離散的な記号の演算システムに関する形式理論の間には、その性質の違いから埋め難い溝がこれまであり、没交渉が続いた。しかし、「最適化」という概念によってその溝を埋めて両者を統合しつつ、「こころ」の中でも特に言語の問題に応用してメジャーな言語理論の1つとなったのが、1993年に登場した最適性理論である。
この授業では、その画期的な“happy marriage”がどのような基盤によって成り立つのかを概観したことで1997年にScience誌に掲載された、アラン・プリンスとポールス・スモレンスキーによる論文“Optimality: From Neural Networks to Universal Grammar”を読む。
認知科学上の理論がいかに言語の問題に応用され得るのか、あるいは逆に、言語理論がいかなる認知的基盤によって成り立っているのかを理解するのか目標である。
授業の進め方としては、最初のうちは教員が講義形式で進めていくが、慣れて来たところで受講者による演習形式(分担による発表形式)を採用し、セクションごとの流れやポイントを内容紹介してもらいながら、適宜補足やディスカッションを行なう。
なお、論文自体は抽象的な概説から成り立っているので、適宜プリントによって言語学の具体的事例の観察や分析を紹介しながら、この理論がどのように応用され得るのかを具体的にイメージできる形で議論を進めていきたい。
評価は、出席や発言など授業への積極性50%、演習(発表)50%として総合的に行なう。
Prince, A. and P. Smolensky (1997) “Optimality: From Neural Networks to Universal Grammar,” Science 275:5306, 1604-1610.
授業の初日には、下記のURLから教科書を各自ダウンロードして目を通した上で出席すること。
http://www.sciencemag.org/content/275/5306/1604.long