われわれは日常生活の中で,言語を用い,他者と関わりを持ちながら生活しています。そうした関わりの中でわれわれは,他者の(あるいは自らの)言語運用・言語行動について,何らかの評価(価値判断)を行っているのですが,評価の際個人が準拠する価値観は極めて多様であるため,同一の言語運用・言語行動に接した場合でも,それに対する評価のあり方もまた大きくばらつくことになります。
上記のような意味での「評価」とは,人間が他者との関わりを持つ際,まず最初に行う認知活動であると言えます。したがって,他者とのよりよい関係を構築していくためには,自分がどのような価値観に基づき,どのようなプロセスで「評価」を行ってしまっているのか,その傾向性を内省・自覚することが大切と考えられます。
この授業では,さまざまな言語運用や言語行動に対し,自分が,あるいは他の受講者がどのような評価を行っているのかを比較・内省し,そこから「理論」を構築する試みを行います。
1. 言語教育における評価,日常生活における評価
2. 評価プロセスモデル
3. 評価における自らの価値観を内省する(ワークショップ)
4. 評価ルーブリック作成演習
5. 「他者への働きかけ」の評価
6. インタビューとその評価
7. 話し合いの評価
ディスカッション・グループワーク・プレゼンテーション等
授業への参加状況(授業内での提出物・プレゼンテーション等含む)50%,最終レポート50%
特にありません。必要あれば適宜授業内で指示します。
宇佐美洋(2014)『非母語話者の日本語はどのように評価されているか―評価プロセスの多様性をとらえることの意義―』ココ出版
この授業に参加するために特別な予備知識は必要ありません。一人一人の学生がすでに持っているものをそれぞれ提示し,話し合いを行う過程において他者から学び,お互いの考えを調整しながら,自分たちなりの新しい概念を形成していくことを目指しています。
言語形式というより,言語を用いた活動のあり方に関心を寄せる学生にとって有益と考えています。