12世紀のフランスでクレチアン・ド・トロワの『ペルスヴァルまたは聖杯の物語』が書かれて以来、時代を越え、国境を越えて現代に至るまで書き継がれ、様々な変容を遂げてきた聖杯探求の物語。その伝統的なテーマは、それぞれの作品を生み出した社会と、そこに生きる人々の心性を映し出す鏡の役割をも果たしている。本授業では、15世紀のイングランドで書かれたThomas Maloryの “The Tale of the Sankgreal” (Morte D’Arthur 『アーサーの死』所収)、それを典拠にして19世紀に書かれたAlfred Tennysonの “The Holy Grail” (Idylls of the King 『国王牧歌』所収) の二作品を取り上げ、各々の作品の中で聖杯探求のテーマがどのような意味を担い、どのような問題意識を表現しているのかを考察する。
初回は中世における聖杯伝説の変遷について講義を行う。翌週以降、学期の前半はマロリーの“The Tale of the Sankgreal”を取り上げ、後半はテニスンの“The Holy Grail”を精読する。そのほかに、時間が許すかぎり、マロリーの作品の典拠となった13世紀フランスの散文ロマンス(邦訳または現代英語訳を用いる)、テニスンの“Sir Galahad”および“Balin and Balan,” T. S. エリオットの “The Waste Land”なども考察の対象に加えたい。
初回以外は受講者による訳読と口頭発表、およびディスカッションを中心とした演習形式の授業となる。
授業への参加態度、訳読や口頭発表の内容、および期末レポートの成績を基に総合的に評価する。
プリントを配布する。
授業中に指示する。
マロリーの作品を原語で購読するが、中英語の知識がなくても履修可能である。