よく言われているように、古代ローマの文学は、形式、表現、修辞、発想の点でギリシアの古典やヘレニズム文芸を手本とし、その影響を大いに受けている。もちろん、ラテン詩を代表する一人、ウェルギリウス Vergilius(前70年~前19年)も例外ではない。『アエネイス』がホメロス叙事詩を換骨奪胎したことは知られているかもしれないが、初期の作品『牧歌 Bucolica』もやはりテオクリトス(紀元前3世紀のヘレニズム詩人)の『牧歌』の翻案であることが言われ、テオクリトス作品との比較なくしては、読解することが難しいだろう。
この授業では、ウェルギリウス『牧歌』(全10歌)をテオクリトス作品との比較を通じて読解し、解釈する。ウェルギリウスの独創はどこにあるか、考察する。ひいては、ラテン文学の特質とは何かという、大きな問いに答えて行く端緒を探って行きたい。授業で用いるのは、邦訳であるが、ラテン語の原文も随時参照する。古典語の理解は前提とはしないが、もちろん理解できることに越したことはない。
各回、以下のテーマを取り扱う予定。
1.ウェルギリウスについて、テオクリトスについて
2.ウェルギリウス『牧歌』第1歌
3.ウェルギリウス『牧歌』第2歌
4.ウェルギリウス『牧歌』第3歌(1)
5.ウェルギリウス『牧歌』第3歌(2)
6.ウェルギリウス『牧歌』第4歌
7.ウェルギリウス『牧歌』第5歌
8.ウェルギリウス『牧歌』第6歌
9.ウェルギリウス『牧歌』第7歌
10.ウェルギリウス『牧歌』第8歌(1)
11.ウェルギリウス『牧歌』第8歌(2)
12.ウェルギリウス『牧歌』第9歌
13.ウェルギリウス『牧歌』第10歌
14.牧歌の伝統
15.期末試験
主に授業担当者の講義をもって進めるが、受講者の自主的な研究報告も歓迎する。
期末試験と平常点
プリントを配布