この授業では,人間の発する「音声」の分布や変化の法則を扱う分野(音韻論) の接近法を学ぶことを通して,現代言語学の目標や考え方や方法論などを理解する ことを主眼とする。題材は日本語や英語に観察される身近な音声現象を扱うが,適 宜他言語の現象も紹介するつもりである。
具体的には,下記教科書を用いつつ,1)日本語や英語を中心とした自然言語の 音韻体系・音韻現象を観察しながら,そこに含まれる規則性や法則性を見い出せる ようになること,2)見い出した規則性や法則性が,音韻論における理論によって どのように説明されるかについての基本的な知識や考え方を身につけること,3) 日本語や英語のデータを主体的に観察・検討することにより,分析の問題点や改善 法など応用的な諸問題を追及できること,などを目標とする。
授業の進め方は講義形式を採用し,指定教科書を叩き台としてトピックごとに内容確認をしながら、随時ハンドアウトにより考察を深めていく。あらかじめ教科書を読んできていることを前提に話を進めるので,授業時には必ず指定範囲を読んでおくこと。
なお,この授業は基本的に修士課程学生のための入門講義(大学院の言語情報科学専攻の「言語科学基礎論 II」との合併科目)である。学部生の履修希望者は,あらかじめ「言語科学への招待 I, II」「基礎言語科学 I, II」またはそれに相当する入門授業を履修していなければならない。その他,詳細については初日に行うガイダンスにて連絡する。
評価は出席数・授業中の適切な発言・最終日に行う(一夜漬けの効かない)試験によって行うので,それ相当の積極的な姿勢が望まれる
田中伸一 (2009)『日常言語に潜む音法則の世界』(開拓社)