第12回言語情報科学研究発表会

日時: 7月21日(金) 4時30分_
場所: 10号館2階 203教室
発表者1: 小林茂之
内容1:
現代語では助詞は固有のアクセントをもたない。しかし、古代語の対格助詞 「を」のアクセントは固有のアクセントをもち、常にH(高)であったと考えられて いる。鎌倉時代の著名なアクセント資料である『四座講式』でも「を」のアクセント 表記はHとされている。また、『浄弁本拾遺和歌集』でも同様である。ところが、 『古今和歌集声点本』諸本ではHとともにL(低)のアクセント表記の「を」も多くみら れる。このことから、従来、『古今和歌集声点本』諸本のアクセントは新しい時代の ものであり、その資料性が問題とされている。和歌では音数律に基づく句の区切りが あると考えられる。そこで、当発表では句末とそれ以外という環境によって、「を」 がHまたはLとなるという仮説を提示して、『古今集声点本』諸本のアクセント表記を 説明する。また、『古今集声点本』諸本のアクセント表記は音調として考えると、従 来の理解とは異なり平安後期〜鎌倉時代のアクセント資料としても自然なものである と考えられることを主張する。

発表者2: Mueller, Felix
内容2:
今まで行われてきた「コーパス言語学」は、言語コーパスを取り扱う範囲を非 常に縮小したものであり、図書館のカタログを処理したり、新聞や雑誌などをアーカ イブに保存したりするようなコーパス処理が目立っている。ところがコンピュータが 発展するにつれて、今まで想像しえなかったような言語コーパス処理が可能になって きた。そのたの近年では新たに様々な言語コーパスを決定する必要に迫られている。 そのためには言語コーパスの構造を決定しなければならない。言語コーパスはいうま でもなく世界の至る所で言語習得、自動翻訳、などの目的で使用されているが、個別 言語や特定の言語理論に依存しないスタンダードはまだ存在していない。スタンダー ドを設定する際には、特定の言語学理論、あるいはコンピュータシステム(例えばウ ィンドーズ)、又は言語の特徴に依存したやり方をできるだけ避けなければならな い。1997年に登場した拡張可能なマーク付け言語XMLは本研究の目的に適合した汎 用機能を有している。そこで、本発表ではXMLを対象とする次のテーマに言及した いと思う:
 XMLの特徴
 XMLによるコンピュータの自然言語処理にあたって使用するタグセット
 XMLの言語学への応用例。


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