『イリアス』第18巻には、鍛冶の神様ヘパイストスが英雄アキレウスのために武具を製造したことが歌われている。なかでも、楯については、精緻な図像が施されており、生き生きとした描写の対象となっている。このような細密描写(技法)は、後続の作家、とりわけ叙事詩人や小説作者に受け継がれることになり、研究者のあいだでは一般にエクフラシスと称される。エクフラシスのを実例を取り上げて、それらが現れる文学作品を精読しながら、エクフラシスの文学的な約束事としての機能を検討し、その伝統をたどることを目標とする。
以下の作品を、各回どれか一つ取り上げて、そのエクフラシスについて分析する予定。
1.ホメロス『イリアス』
2.ホメロス『オデュッセイア』
3.エウリピデス『イオン』、『タウリケのイピゲネイア』など
4.アポロニオス『アルゴナウティカ』
5.テオクリトス『牧歌』第1歌など
6.カトゥッルス第64歌
7.ウェルギリウス『アエネイス』第1巻
7.同上第6巻
8.同上第8巻
9.オウィディウス『変身物語』
10. ペトロニウス『サテュリコン』
11. アプレイウス『黄金のろば』
ただし、取り上げる順序は、必ずしもこの通りではない。
授業は、担当者による講義と受講生の発表とによって進める。受講生は、各人の興味関心に応じて具体的に文芸作品(ギリシア語やラテン語の文芸作品でなくともよい)を選び、そのエクフラシスについて研究発表すること。
授業への参加度、発表、レポートによって総合的に評価する。
授業中に指示する。
授業中に指示する。
検討する作品については、翻訳を用いるので、ギリシア語やラテン語の知識は必須ではない。ただし、受講者は、授業計画で取り上げる作品の翻訳(日本語でも、その他比較的得意な外国語でもよい)を各自でかならず確保し、必要に応じて作品全体が見渡せるように準備しておくこと。各作品の翻訳については初回に紹介する。