人間言語で用いられる音の分布や配列は,一見複雑には見えるがランダムになされているわけではなく,ある種の法則に従っている.それは誰しも当然のように受け入れ,それに従って言語を用いているにもかかわらず,自然法則の場合と同様に普段意識されることは全くない.しかし,共有された法則があるからこそ,母語話者は当該言語の音列を難無く生成・理解し,言語を問わずその獲得に大差は見られないのである.
この授業では,そうした言語音の背後にある法則を探求することを通して,それを成り立たせる知識の構造(文法)を解明する分野 --- 音韻論(=音の文法)の世界へと誘い,英語や日本語などの身近な言語現象を観察しながらその初歩を導入する.要は,音韻論の基本的な方法論や思考法を学びつつ,身近な言語現象を観察してみること,そこで起きている現象の「なぜ」を探ることを目標とする。
議論の叩き台として下記教科書を用いつつ,指定タームの中で,第1回〜第3回はChapter 5 Phonetics: The Sounds of Languageで扱われる内容について,第4回〜第6回はChapter 6 Phonology: The Sound Patterns of Languageで扱われる内容について,それぞれ講義
・演習を行う.
phonetics(音声学)とphonology(音韻論)はそれぞれhow-questionとwhy-questionに対応する分野であり,前者は個々の音や音列がどのような性質を持ちどのように生成されるのか,後者は生成された音列がなぜそのようなパターンを形成するのかを考究するものである.why-questionは当然ながらhow-questionを前提とするので,音韻論にとって音声学の基礎知識は必須となる.
第7回(最終回)はそれまでの内容を総括する意味で,期末試験を実施する.
毎回の授業の進め方としては,指定範囲を必ず読んでくることを前提に,「スライドを用いた講義形式+関連問題を解く演習形式」のセットで話を進める.宿題も頻繁に課す.それと平行して,別プリントにてテキスト以外の話題をも補足しながら,議論を拡大・深化させてゆきたい.
話の流れにおいて,質問も大歓迎だが,指名も頻繁に行なう.積極的な参加を期待したい.
評価は,出席や発言など授業参加の積極性20%,宿題30%,期末試験50%の配分にて決める予定.
Fromkin, V., Rodman, R., Hyams, N. (2014). An Introduction to Language. 10th edition. Boston: Wadsworth, Cengage Learning.
授業時に指示する.
学祭言語科学コースの必修科目であるので,コース所属(予定)者は必ず受講すること.