『万葉集』巻第三「雑歌」の部をテキストとして解読する。同巻は従来、編纂論の立場から巻一・二の拾遺篇として取り扱われてきたが、立場をテキスト論へ移行させることにより、いっそう奥行きのある理解がひらけてくるものと予測される。容易に看取できるのは、舒明皇統歌集としての巻一・二を巻四とともに引き取り、聖武天皇一代記としての巻六へと受け渡す役割だが、年代記的配列が不鮮明な点から見ても、歴史を語るテキストとしては巻三は不徹底に出来上がっている。裏返せば、明確な歴史テキストといえる巻一・二や巻六とは異なる側面に巻三の特質がありそうに思われる。個々の歌を精読することを通してこの問題に接近したい。
(1)巻一
・巻六との比較。特に行幸従駕歌と官人の旅の歌。作者の陣容。特に皇子女の顔ぶれ。年次の上限と下限。地名の分布。
(2)冒頭歌群(235~244)の分析:君臣の仲らい。
(3)羇旅歌の広汎な分布:官人の往来が浮かび上がらせる律令国家の版図。
(4)宮廷歌人笠金村・山部赤人の作:巻六所収歌との相互補完。
(5)大宰府歌群(328~351):巻六所収歌との相互参照。
(6)~(13)問題となる歌を個別に分析。
「授業計画」のうち、
(1)~5)は品田が担当し、問題点を指摘しつつ見通しを提示する。
(6)~(13)は受講生が分担して発表し、討論する。
各自の発表と討論を成績評価の判断材料とする。
佐竹昭広
・木下正俊
・小島憲之『万葉集 本文篇』塙書房。
坂本信幸
・毛利正守『万葉事始』和泉書院。
活発な討論を期待する。