この授業では、語彙情報と統語情報を結ぶインターフェースに焦点を当てる。特に、動詞の語彙的意味は、その動詞がどのような文法項や二次的述語と共起するかに現れ、動詞ごとに指定される文法項構造を決定する主な要因である。その文法項構造は文構造に投影されるが、まずどのように語彙情報を記述し、それを文構造に反映させていくかというさまざまな統語理論におけるアプローチを取り上げる。
まず、語彙情報から統語構造への投影のプロセスが投げかける問題として、語の多義性、曖昧性、意味の境界線(どこまでが一つの意味か)などを取り上げる(第2章)。次に、文法項の数のバリエーション、省略可能な文法項、文法項に付与される意味役割とそこから文法機能へのマッピング、自他交替(causative-inchoative alternation)、使役化、非対格動詞、名詞派生動詞と動詞派生名詞など、文法項構造を決定するにあたり検討すべき課題や、文法項構造の変換(文法項交替)を伴う言語現象を見る(第3章)。語彙的意味を概観し(第4章)、文法項構造から句構造への投影をさまざまな統語理論の枠組みで検証する(第5章)。最後に、語彙情報の投影が文構造を決定すると提唱するHPSG文法などの語彙的アプローチと、文構造自体を一種の型紙のような文法規則とする構造文法的アプローチを比較・検討する(第6章)。
講義と授業中のディスカッション
積極的な授業参加と、学期末レポートを評価対象とする
Word Meaning and Syntax: Approaches to the Interface by Stephen Wechsler Oxford University Press. 2015. ISBN: 978-0-19-927989-0
使用しない
特定の統語理論、意味論、形態論の知識を前提としないが、統語論の入門を履修済みであることが望ましい。