日本語の形態論・統語論研究において、どのような言語現象が話題となり、どのように分析されてきたかを概観する。扱うトピックは、受け身、使役、複合動詞、かき混ぜ、再帰代名詞など。基本的にPrinciples and Parameters (P&P)理論の枠組みにおける分析を見ることになるが、特定の理論的枠組を熟知することが目的ではなく、日本で理論言語学を学ぶのであれば当然知っておいてほしいと思う日本語の形態・統語現象について一定の知識を得ると同時に,実際の言語分析の手順を身につけることを目標とする。Natsuko Tsujimura (2014) An Introduction to Japanese Linguistics, 3rd ed. (Blackwell)の3章の一部,4章,5章,および6章の一部をテキストとし,必要に応じて他の概説的論文も用いる。また、G. グリーン、J. モーガン著『言語分析の技法--統語論を学ぶ人のために』(東京大学出版会, 2006)を参考にして論文執筆・議論構築の基礎を身につけることもめざしたい。
1.導入
2.複合における音韻現象(連濁,複合語アクセント)
3.品詞
4.派生形態論(名詞化)
5.複合(複合動詞,動詞由来複合語)
6.語順とかきまぜ
7.再帰代名詞と「主語」
8.受け身
9.使役
10.繰り上げとコントロール
11.関係節
1
2.軽動詞構文
1
3.動詞の意味と構文
概説的な内容の講義と,実際の言語分析を行う演習とをとりまぜて行う
授業中に課す課題と期末論文による総合的評価
書名: An introduction to Japanese linguistics, 3rd ed. 出版社: Wiley-Blackwell 著者: N. Tsujimura ISBN: 9781444337730 Kindle版も有
書名: 言語分析の技法 出版社: 東京大学出版会 著者: Green & Morgan、 中澤・伊藤訳 ISBN: 4130820109
この科目は,言語情報科学専攻が提供する言語学の「入門科目」の一つであるが,必修科目ではない。言語科学基礎論I(統語論入門)を履修済み、あるいは同等の統語論についての基礎知識を有していることが望ましい。言語学についての基礎知識を前提とする。