東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
ジョヴァンニ・ボッカッチョ Giovanni Boccaccio(1313-1375)は、『デカメロンDecameron』を執筆後、先輩ペトラルカの影響もあってラテン語で百科全書的な性格の著書を執筆した。『名婦伝 De mulieribus claris』もその一つである。日本では、主に『デカメロン』の作家として知られているボッカッチョであるが、古代ローマのウァレリウス・マムシムス以来の人物伝集成の伝統を引継ぎ、のちの人文主義者の活動にも重要な手本を示しているように思われる。彼自身、そもそも俗語文学においても、神話的・歴史的範例をふんだんに取り入れている。範例はこの作家の神髄なのである。この授業では、まずは『名婦伝』に含まれる106の神話上、歴史上の有名な女性にまつわるものから、いくつかを選択し、人文主義者ボッカッチョの知られざる側面を紹介する。彼の魔訶不思議なラテン語文体を味わい、その豊饒なる精神世界の全体像をつかむためのきっかけを作りたい。
上記文献を精読しながら、解釈上の問題点を検討する。執筆にあたってボッカッチョが参考にした思しき先行文献との関連にも着目し、随時並行するしている箇所を参照する。
文献講読。少なくともラテン語初等文法を(習得したという自信の有無は問わない)一通り学んでいることが望ましい。ときに変てこなラテン語がでてくるので、それも楽しみにしてほしい。
平常点とレポート。
適宜プリントを配布する。辞書は各自で用意すること。
授業中に紹介する。