東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

Language and Information Sciences, University of Tokyo

東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1

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表現としての日本語I(『万葉集』に語られた聖武朝)

  • 科目コード(修士): 31M200-0950S
  • 科目コード(博士): 31D200-0950S
  • 開講学期: S1, S2
  • 曜限: 木(Thu)3 [13:00-14:45]
  • 教室: 14号館 603B室
  • 単位数: 2.0
  • 担当教員: 品田 悦一

授業の目標・概要

『万葉集』巻一・巻二には舒明天皇の皇統の発展のありさまが記されており、巻六はその続編として、文武天皇の死後久しく待ち望まれた男性天皇である聖武天皇の治世を記念する意図をもって編まれたとされる。収載された倭歌群は聖武朝の政治史を直接語ることはないが、『続日本紀』などの史料と照らし合わせつつ、眼光紙背に徹するとき、意外なまでに雄弁なメッセージが読み解けてくるように思われる。しかもそこには、皇統のあるべき姿と現実との落差に対するアイロニカルな視線がほの見えさえする。

授業のキーワード

  • 『万葉集』 聖武天皇 大伴家持 天然痘 平城京 遷都

授業計画

1)『万葉集』を歴史テキストとして読むとはどうすることか。
2)歴史テキストとしての『万葉集』における巻六の位置。
3)巻六冒頭に並ぶ行幸従駕歌を読む。
4)天平十二年東国巡幸時の歌を読む。
5)巻末に並ぶ田辺福麻呂歌集の歌を読む。
6)神亀五年難波行幸時の歌。
7)天平四年西海道節度使派遣時の歌。
8)天平八年芳野行幸時の歌。
9)石上乙麻呂土佐配流時の歌。
10)作者の経歴に注意しつつ、巻六の宴歌を見渡す。
11)その他、受講生の創意によるテーマ設定。

授業の方法

「授業計画」中、5)までは品田が講義形式で行なう。6)以下は受講生による分担発表。

成績評価方法

発表の出来映えと討論中の有意義な発問や批判を総合的に判断して成績評価する。

教科書

佐竹昭広他2名『補訂版 万葉集本文篇』塙書房
坂本信幸・毛利正守『万葉事始』和泉書院

参考書

吉井巌『万葉集全注 巻第六』有斐閣

*他は授業中に指示する。

履修上の注意

 『続日本紀』と照らし合わせるといっても、歴史的事実に還元して事足れりとするのではない。『万葉集』巻六が歴史史料とのインターテクスチュアルな関係を通して語ろうとしているところを読み解いてみようというのである。その意味では本邦初演の試みといえる(もちろん世界でも)。