東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
近世日本において、「文字」は、「新井白石」という例外を除いて、体系的・総体的に研究対象になることはなかった。しかし、近世人に「文字」が意識化されていなかったわけでは決してなく、中国=漢字との関係の中で、いびつな形で「文字論」は大いに展開されていた。それら近世の文字論は、初期の近代国語学がまず克服しなければならない対象であったと同時に、陰に陽に近代日本の文字論にも影響を遺していった。近代・現代の日本語文字をめぐる言説を正しく理解する前提として、近世の文字論を原テキストによって読解・理解したい。
近世日本の文字論の展開についての概説を行ったのち、概ね次のような資料を読み進める予定である(進度等の都合により、変更の可能性あり)。
01)中世日本の文字論
02)「いろは歌」を巡る論
03)新井白石の文字研究
04)安藤昌益の文字論
05)神代文字論
06)反神代文字論
07)近世末期国学者の文字論
主として参加者全員の輪読と討議によって進行するが、必要に応じて調査・発表を求めることもある。
平常点(40%)とレポート(60%)による。
プリントを配付する。
矢田勉『国語文字・表記史の研究』汲古書院,2012。
他は授業中に適宜紹介する。