Sセメスターに続いて、15世紀後半のイングランドで書かれた散文ロマンス、トマス・マロリーの『アーサーの死』を精読する。フランス語や英語による様々なアーサー王関連の物語を典拠とし、薔薇戦争と呼ばれる内乱を背景に生まれたこの作品は、アーサー王をめぐる物語的伝統の中世におけるひとつの到達点を示した記念碑的な作品であると同時に、19世紀以降の英詩や小説に多大な影響を与えた作品でもある。本授業では、王国の没落に至るまでの過程を描いた二つの物語("The Tale of Sir Lancelot and Queen Guenivere"と "The Death of Arthur")を原語で味読する。
初回は物語の典拠となった先行作品や時代背景について講義を行う。翌週以降は、"The Tale of Sir Lancelot and Queen Guenivere," "The Death of Arthur"を順次精読する。時間が許すかぎり、以下のテーマについてあわせて考察したい。 1) 原典と比較した際のマロリーの語りの独自性 2) 政治的な読みの可能性 3) 物語中のジェンダー表象 4) 後世への影響
初回以外は受講者による訳読と口頭発表、およびディスカッションを中心とした演習形式の授業となる。
授業への参加態度、訳読や口頭発表の内容、および期末レポートの成績を基に総合的に評価する。
Oxford World's Classicsのシリーズに収められた以下のペーパーバック版を使用する。
Sir Thomas Malory, "Le Morte Darthur--The Winchester Manuscript," ed. Helen Cooper (Oxford: Oxford University Press, 1998).
授業中に指示する。
中世末期の作品を原語で購読するが、中英語の知識がなくても履修可能である。