東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
文学作品において語っているのは誰か、あるいは何か、これは、ロラン・バルトが「作者の死」(1968)の冒頭でバルザックの『サラジーヌ』を例に提起した問いだが、いまなお古びてはいない。昨年度Aタームの「テクスト分析演習」でも同様の問いを立て、バルトから始めてバンヴェニストの人称論やロベルト・エスポジトの『三人称の哲学』まで確認したが、今学期は「語りの声」という独自の概念を提出したモーリス・ブランショの文学言語論を中心に読解したい。
始めに、授業の趣旨、および、バルトやバンヴェニスト等の理論について概観した上で、上記のテーマに関連するブランショの論文および関連文献を読解する。読解するブランショのテクストは、 « La voix narrative (le « il », le neutre) » (1964)から始め、そこで提示される思想の淵源を辿って、カフカ論 « Kafka et la littérature » (1949),
« La solitude essentielle » (1953), « Kafka et l’exigence de l’œuvre » (1952)等へと進む予定。
指定されたフランス語のテクストを精読する。あらかじめ担当者を決めておき、担当者は訳文を作成するとともに、担当箇所に出てくる事項について解説できるようにしておく。
授業での報告・議論および学期末レポートで総合的に評価する。
コピー資料を使用する。
フランス語初級文法を終えていること。