東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
本授業では翻訳という行為について多角的に考察する。翻訳とは一語一語を異言語に置き換えるといった作業ではなく、そこにはさまざまなかたちでの「ずれ」と摩擦、衝突、力の拮抗があり、そして翻訳者は決定不能な宙吊り状態に置かれたまま複数の言語間を往来しつづける。翻訳の限界は同時に翻訳の可能性を示唆するものであることを確認しつつ、具体的な文学テクストに即して翻訳の問題について考えたい。
日本語で書かれたテクストを中心とする。日本語を「外国語」として、外から眺める視点を獲得しつつ、翻訳のプロセスから見えてくる言語の姿について検証する。
・翻訳とは?
・出来事としての翻訳について
・「日本語」の思考への問い
・古典詩歌の翻訳をめぐって:俳句を中心に
・明治期の翻訳と近代
・近代詩の翻訳
・近代小説の翻訳:川端康成、三島由紀夫など
・村上春樹と「世界文学」
・多言語状況と現代
・翻訳の可能性について
具体的には、日本語で書かれたテクストの英訳例(場合によっては他言語の例)の分析を中心に授業を進める。授業参加者による積極的な議論に期待する。なお、ごく短いものになるが、折々に実践演習も組み込む予定である。
授業参加、小課題、期末レポートの総合評価