東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
『零度のエクリチュール』(1953年)に引き続いて『ミシュレ』(1954年)が刊行されたことにはどのような意味があるのだろうか。一見それは『零度』の地点からの後退を示すものとも思えるのだが、しかしそこには『零度』における明晰な歴史的・イデオロギー的見取り図をはみだす特異にして過剰な「文学」の再発見の試みがあるのかもしれない。バルトの著作のなかであまり注目されないものの、非常に豊かな内容を示す『ミシュレ』を精読し、初期バルトの批評のありかたを検討するとともに、19世紀的想像力の現代性を考える。
ロラン・バルトの批評家としての出発を概観し、『零度のエクリチュール』における彼の主張を振り返ったのち、『ミシュレ』を精読し、のちの彼の批評との関連を考える。またバルトに導かれつつ、歴史家ミシュレの、ロマン主義的作家としての特異な文体と想像力のダイナミズムを検討する。
いわゆる訳読方式による。
平常点およびレポート
原著 Roland Barthes, Michelt, Seuil, "Ecrivains de toujours", 1954 は現在絶版で入手困難だが、バルト全集に再録されている。授業ではプリントを配布する。
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